2018年08月

5月にブログで笹山原遺跡での試料採取の状況をお知らせしましたが、その時に
採取した試料の測定結果が出ました。
今回は、フラスコ状土坑の4か所から採取された炭化物を測定しました。
これらの炭化物は、木が燃料などとして燃やされて残った木炭の小さな”かけら”
です。下の写真は土坑の断面剥ぎ取りに炭化物の出土位置を示したものです。

フラスコ状土坑断面(試料位置記入)
年代測定の結果を下のグラフに示します。約4100~3700年前で、縄文時代
後期前葉から中葉頃に当たります。

笹山原2018マルチプロット編集(ブログ用)
断面で地層の重なり合いを観察すると、C-No.1→C-No.3→C-No.4→C-No.7
の順番で土坑に入ったことがわかります。しかし、炭化物の
年代はその順番
で新しくなっていません。土坑の一番下、底にたまった土に含まれていた
C-No.1が4個の中で一番新しい年代3850~3700年前頃)となりました。
この理由として、次のようなことが考えられます。

理由1 土坑は短期間で埋まったので、土坑の中で炭化物の年代にあまり差
   が出ない。

理由2 土坑が少しずつ時間をかけて埋まっていく間に、土坑の周辺などで
   人々が焚火をしてできた炭化物が、燃やされた順番とは違う順番で
   土坑の中に入った。

理由3 木が長く生きる間には多くの年輪ができる。年輪は最も外側で作られ、
   内側は成長が止まっているので、内側と外側で年代測定すると年代差が
   出る(古木効果)。このため、実際には同じ頃に死んだ木でも、木の
   外側と内側の炭化物が測定されると、見かけ(数値)では違う年代に
   なってしまうことがある。

 

上に挙げた理由には同時に成り立つものがありますし、別の理由が考えられる
かもしれません。この遺跡では、今のところこの時期の遺構や遺物はこの土坑
以外には見つかっていないため、この時期のこの遺跡や土坑がどのように
使われていたのか、もっと詳しく調べる必要があります。
なお、この内容は、7月21日から9月24日に東北歴史博物館(宮城県多賀城市)
で開催されている特別展「タイムスリップ!縄文時代」で使われています。

http://www.thm.pref.miyagi.jp/exhibition/detail.php?data_id=1040

その中の「はかせの研究室」では、郡山女子大学による笹山原遺跡の調査が
紹介され、上の年代測定結果も断面剥ぎ取りに表示されています。
年代測定の結果については、子供向けにかみ砕いて解説した資料を当社で作成
し、会場で配布しています。
笹山原遺跡の展示は8月21日から9月2日までです。あわせてご覧ください。

 

  

 

当社も企業展示(ブース出展)いたしておりますので、是非お立ち寄りください。

 開催期間:2018年8月24日(金)~ 8月26日(日)
 開催場所:首都大学東京南大沢キャンパス

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古美術・骨董の専門誌、「目の眼 」の第504号(2018年9月号)に広告を掲載致しました。
14C年代測定では、木製品、紙・布製品、骨角牙製品等、動植物に由来する炭素を
含む試料が測定対象となります。

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